若草HUTTEさんの「地元と山への情熱」
お店の立地は、最初からハイカラ通り商店街に決めていたんですか?
宮崎県中心市街地でそれなりの広さがあるところを探していました。
以前ここは「キンコンカン」という洋服屋だったんです。
ですのでよく「ここキンコンカンさんやったよね」と言われることも多いです。
自分たちもその世代でもちろん知っているので、そういう思い出はありますね。
初めて若草HUTTEさんに来られる方は少し探すだろうなと言う場所にお店があると思うのですが
街中でも路地裏なのは、自分たちらしいなと思っています。
メイン通りじゃないところを探していましたし。
ちょうどいいところがあったんですね
そうですね。
若草HUTTEさんはカフェもされているので、コーヒーも出されていますよね
当店はそのブレンドと焙煎を、宮崎市内のコーヒーロースターハマサキさんにオリジナルで頼んでいます。
オープン前に美郷町の渡川に来てもらって、山を見ながらイメージを膨らませてもらって、コーヒーを作ってもらいました。
コーヒーらしく「ガツンとくるコーヒー」の方が山師のイメージに合うと思って、深煎りをメインに出しています。
容量もたっぷりです。
美郷町をイメージしたコーヒーなんですね、美味しいです
ありがとうございます。
当店では「HUTTEブレンド」と「渡川ブレンド」の2種類をご用意しています。
今日お出ししているのは、深煎りのHUTTEブレンドです。
美郷町のものを販売されていますが、実際にお店に置くものは現地で食べてみて、これを置こう、と決められるんですか?
そうですね。
現地で食べることもあるし、ここでサンプルを食べることもあります。
美郷町のものばかりではなく、県内のものが多いですね。
たまに県外のものも置いたりしています。
パッケージもおしゃれで可愛いですし、人にプレゼントしたくなるものが多いですよね
売り場のスペースも限りがありますし、何でもは置けないので調整しています。
県内でも地域が近いと特産品も似てきます。
厳選しないと置けなくなってきますが、偏り過ぎないようにお客さんの反応も見ながら商品を決めています。
ただ、売り場が大きいお土産屋さんとかにもあるものを当店に置いてもあまり意味がないので、まだ知られていないかな?というものを選ぶようにはしています。
もちろん、おいしいのは大前提なんですけどね。
美郷町だけの発信ではなくて、宮崎県の山の発信を担っているように思います
そうですね。
自分たちと関係性がある人たちのものも多いから、そういう人たちの活動が説明できて、こういう環境なんですと語れるものの方がいいと思っています。
最近のものだと、山は関係ないですけど佐土原ナス専用のお醤油とか。
ナス専用!
佐土原ナス専用です。
専用と言っても他の料理にも使えて美味しいんです。
他にも延岡メンマも置いています。
放置竹林といって、今、全国で放置された竹林がどんどん伸びていてすごいんですよ。
竹って成長が早いからどんどん浸食していくんです。
それをメンマにすることによって、放置竹林の課題解決にもなる。
しかもメンマって、99%海外産らしいんです。
自分たちが食べているもののほとんどが中国産のもので、国産はわずか1%しかないみたいです。
とても貴重な1%のひとつがここにあるんですね
これを作っている方は、「森を育てるメンマ」という言い方をしています。
課題に独自のアプローチで情熱的に取り組んでいる人たちが作っているものの方が一緒にやっていて面白いし、伝えがいもありますよね。
今、店内には何点ぐらいの商品が置かれているんですか?
数えたことがないですね(笑)
仕入れたものは単発で終わることはあまりなくて、当店のようなお店はすぐに答えが出ないので、ある程度の期間は続けないといけないとは思っています。
定番で置いている商品はありますか?
定番で行くと、定番で鉄板で売れるのは、ゆずドレッシングと梅干しですかね。
同じ人がずっと買っていくし、誰かにあげたりとか、誰かにおすすめしてその人がハマっていくようなこともあるみたいです。
ここに置いてあるものはお土産目的での購入も多いので、日常的に使うものと比べると、少しお値段が高いものも多いです。
自分へのご褒美みたいな感じでもいいかもしれませんね
うん、そういう方も多いですね。
すごく気になったのですが、薪や炭も置かれているんですね!
薪はもちろん、自分たちが山師なので、原木も作るから薪も用意できるんです。
しかも美郷町の炭は、日本三大備長炭の1つなんです。
日本三大備長炭!
日向備長炭と言うんですけど、ほぼ美郷町の宇納間というところで作られています。
備長炭って、叩くと金属を打ち合わせたようなきれいな音がするんですけど、これは時間をかけて焼くことによって、炭の中の目が詰まっているからなんです。
この状態になるまでに、約1か月の間、窯に入れて火を切らさないよう誰かが見ているんです。
1ヶ月!そんなに長くじっくり焼くんですね
そう。
1ヶ月かけて蒸し焼きにして、完全に水分を抜くんです。
職人さんたちはその釜から出てくる煙の色や匂いで、窯の中の状況がわかるんですよ。
焼き締められているということでしょうか?
そうです、しっかり炭化した硬く美しいできあがりです。
良い値段なので、高級な飲食店さんなどで使っていたりします。
こちらの炭で焼くとどういう違いが出ますか?
火力が良いのと火持ちが良いので長時間使えます。
日向備長炭はアラカシという木を使っています。
煙と灰が少なく、燃焼する様も綺麗なので、燃料というより芸術品のようにも見えます。
もちろん木も大事なんですけど、炭を作る技術が重要なんですね。こういうことって知らないじゃないですか。
ホームセンターでなどでお安く売っている物が普段使う上では便利かと思うのですが、たまには「今日のBBQは備長炭を使ってみよう」「美郷の食材を美郷の備長炭で焼いてみよう」など、そういった楽しみ方もして貰えると嬉しいです。
まずは、こういうのもあるんだよって、知ってもらう場所でありたいんです。
若草HUTTEにあるから、美郷町で炭が作られているんだ、と気づく人がいるということですよね
そうです、そのきっかけだけでいいんです。
ちなみにですが、炭は燃料としてだけでは無くて、他の用途にも使えます。
炭には消臭効果があるので、例えば靴とか、ちょっとしたものに入れたいときでも使える大きさなんですよね。
他には夏場だと、水を冷蔵庫に入れておくときに炭を入れるだけで、その水が美味しくなるんですよ。
お米を炊く時に炊飯器に入れるとカルキ抜きにもなって美味しく炊けます。
そちらのジェラートもそうですか?
こちらは、美郷町の「OttO OttO」さんにお願いしています。
県内でも有名なピッツェリア&ジェラテリアです。
ここからは遠いですが、街から美郷町へ通う人もいるくらい美味しいんですよ。
ピザは薪釜で焼く、いわゆるナポリピッツァですね。
ロケーションもいいし、ピザを食べて、ジェラートも食べられるので最高ですよ。
デートスポットにもオススメできますね。
他にも、美郷町の商品だと栗製品が人気です。
特に栗きんとん。
2種類の栗きんとんを扱っていて、一つは「はなえ」というお店の栗きんとんを置いているのですが、そのお店は9月の栗の時期から半年しか開いていないんです。
「はなえ」の栗きんとんは茶巾絞りといって、絞ったような三角のタイプの栗きんとんです。
それがシーズン中は当店にも商品が来て、その時期は栗きんとんを買いに来る人が多いですよ。
栗もそうですが、若草HUTTEさんの商品はプレゼントで送るととても喜ばれそうですね。ここから商品の発送はできるんですか?
今の時期だと詰め合わせのお中元を頼まれることも多くて、セットにして送ったりしていますよ。
企業様からまとめて注文をいただいたりすることもあります。
前もって言っていただければ内容や数量など対応可能です。
季節限定ですと、ほかにどのようなものがありますか?
新米の時期は新米が入りますし、あと美郷町で作っている原木生椎茸は毎回人気があります。
それと、期間が短すぎて記事にしにくいかもしれないのですが、原木の舞茸を作っているんですよ。
原木の舞茸?初めて聞きました
原木の舞茸は1年間で2、3週間しか発生しない、とても貴重な舞茸です。
だから、流通したものを見たこともないし、食べたこともない人がほとんどだと思います。基本スーパーにある椎茸や舞茸は、ほとんどが工場の室内で作っているものなんです。
そういった菌床栽培の舞茸ももちろん美味しいし、年中採れるから安定して食べられる利点があるので良いですよね。
でも原木舞茸を食べたら、舞茸の概念が変わるはずです。
「あ、これが舞茸なんだ」と思いますよ。
2、3週間しか出ないということは、販売される期間はもっと短いんですか?
その期間中は販売可能なのですが、天候にも左右されるので、まずはご予約してくださった方から販売させて頂いています。
飲食店さんに納めることも多いです。
宮崎市内の近隣のお店でも毎年使っていただいています。
出会えたらすごくラッキーですね!
香りと食感が違うので、ぜひ出会っていただきたいです。
生椎茸も気になっているのですが、いつぐらいに販売されるんですか?
生椎茸は11月ぐらいで、舞茸は10月上旬です。
今西さんの弟さんが作られているんですか?
そうですそうです。
生椎茸も原木舞茸も、どちらも出たらSNSでお知らせするのでぜひチェックしてください。
聞けば聞くほど、本当に美郷町には良いものがたくさんありますね!
そうなんです。
良いものがたくさんあるので、若草HUTTEで少しずつ山のこと、美郷町のことを知ってもらう活動を重ねていって、1000人に1人ぐらいかもしれないけれど、実際に足を運んでみようとか、住んでみようとか、林業をやってみたいとか、炭焼きをやってみたいとか、興味を持っていただけると嬉しいです。
美郷町でできることはたくさんありますので、そのきっかけ作りの1つになれれば良いなと思っています。
お店は、山師のお仕事と両立されていらっしゃるんですか?
気づいちゃいましたか(笑)
よく、通っているんですか?って聞かれるのですが、全く通っていないんです。
このお店ができてからは、一切山の現場に入っておりません、私。
でもお話を聞く限り、両立は難しそうですよね
難しいですね、無理です。
ただ山師というのは名乗っていて、今の時代こういう役割も大事だなと思うんです。
他の産業や会社も、全員が現場にいるわけではないじゃないですか。
営業がいて、総務がいて、それぞれ会社に欠かせない大事な仕事をしていますよね。
私は山師として現場にいたのはお店を作るまでの2年間だけでしたが、美郷町や山のことを知ってもらうためのこういった活動も、山師としての仕事の一つだと思うので、あえて山師を名乗っています。
今でも弟が山師として現場に出ていますし、役割分担ですね。
知ってもらうことって大事ですよね
元々山師側の情報が少ないし、山師に会ったことがない、そもそも山師が何をしているのか知らない人が多いと思うんですよね。
でも宮崎には同じ仕事をしている人はたくさんいるはずなんですよ。
そういった情報を出していって、敷居を下げたい、間口を広げたいんです。
たまたまコーヒー飲みに来たら山師の店だったって、面白いじゃないですか。
ですので「山師がやっているお店」としては出していなくて、「普通のお店」として来てもらえる状態にしているのが大事だと思っています。
ということは、お客様と話していると「山師ってなんですか?」と聞かれることもありますか?
ありますね。
「山師がいるって聞いたんですけど」と来られる方もたまにいます。
「なんでジビエとか椎茸とか出しているんですか?」とか、「美郷町の商品が多いのはなんでですか?」と聞かれることもあります。
あと、美郷町の出身の方もいらっしゃいますね。
美郷町が出身で、宮崎市に出てこられている方ですか?
そうです。
美郷町を出ている人とか、親が美郷町出身だったとか、そういう人も来てくれて話をしたりすることもあります。
でも何も気づかずに帰られる方ももちろんいます(笑)
それはそれでいいんです。
それは押し付けてしまう部分でもあるので、一方的な押し付けじゃない方がいいんです。