一番街商店街

鮨処江戸銀「寿司が好きだからこそ、お客様にもおいしい寿司をお出ししたい」

江戸銀さんと「一番街」

街の印象についてもお聞きしたいのですが、一番街の雰囲気はいかがですか?長年お店を構えていると、変化もあるのではないでしょうか?

昔に比べると、街がとても華やかになりましたね。寿司屋は比較的多かったのですが、昔は居酒屋や飲食店は少なかった。最近は飲食店でも焼肉店や創作料理など、ずいぶんとお店のバリエーションが増えました。お寿司屋さんでも、立ち食いスタイルの新しいお店も増えています。ガラス張りが多くなり、店内の灯りが漏れて通りも明るくなりました。

商売をしている身からすれば、人が集まるようになってありがたいですよ。やはり人が集まっている賑やかな場所に人は寄ってきます。人通りが増えるからこそ、「このお店気になるな」と立ち寄っていただける。やっぱり、街に人がいないと寂しいですよ。コロナ禍のときは、みんな苦労しましたから。

コロナ禍以降の変化は感じられますか?

お客様の飲み方のスタイルが変化したな、と感じています。おうち飲みの機会や近場のお店で楽しむ方が増えたので、街へ来る回数が減った印象ですね。家に帰宅する時間も早くなったように感じます。ただこればかりは仕方のないことで、その変化に合わせて私たちも努力していくだけです。営業形態を工夫したり、わざわざ街に出かけたくなるような仕掛けをしたりと、変化に柔軟に対応していくだけ。きっとこれからも変化していきますし、時代に合わせて守るだけでなく、変わる部分があってもいいのではないでしょうか。

江戸銀さんの「これから」

これからの展望はいかがですか?

お客様とのコミュニケーションを大事にするスタイルは、これからも大切にしていきたいですね。その視点で言えば、これからは小さなスペースのこぢんまりとしたお店が人気を集めるかもしれません。どうしても大きなスペースを構えると、お客様との距離が生まれてしまう。コロナ禍で物理的な距離が離れてしまう時間が長かった分、お客様とより近い距離で向き合えるスタイルは大切にしていければと思っています。

一番街や商店街についてはいかがでしょうか

鮨処江戸銀の看板

私が大々的に何かできるわけではありませんが、イベントやお祭りがあれば積極的に協力していきたいと思っています。昔に比べると商店街の繋がりは弱くなってしまいましたが、それでも助け合いや支え合いの文化は生き続けています。そうした部分は大切にしていきたい。

イベントやお祭りは準備も必要ですし、どうしてもおよび腰になってしまう場合も多いものです。ただ、何かしないと街は活性化しない。客商売をやっている以上、お客様に足を運んでいただくためのきっかけ作りは続けなければなりません。待っているだけでは、お客様は足を運んではくれませんからね。

まずやってみて「楽しかった」「賑やかだった」「うるさかった」「歩きづらかった」、ポジティブな意見でもネガティブな意見でもなんでもいいんです。まずは何か反応があることが大事。そこからまた工夫したりアイデアを膨らませていけば、街がもっと賑わうきっかけが生まれるのではないでしょうか。

最後に、長年お仕事を続けていくうえでの秘訣があれば聞かさせていただけますか?

ときどきお客様から「毎日同じ仕事をして飽きないのか」と聞かれることがあります。でも、私からすれば同じ仕事は一つもないんです。お客様も変わる、話す内容も変わる。素材やネタの鮮度だって、毎日変わります。「寿司を握る」という行為は同じでも、一つとして同じ状況や仕事はないんです。だから飽きることなんてありません。

お客様と話していると、いろいろなお話を聞かせていただけます。知らないことをたくさん教えていただける。本当に毎日が勉強です。それが仕事の楽しさではないでしょうか。秘訣というほどではないですが、楽しいからこそ長く続けられる。仕事ってそういうものだと思っています。

定年がない仕事なので、身体がいうことを聞かなくまではそうやって楽しく仕事を続けていきたいですね。

街ぐる取材班 編集後記

後藤孝明

ライター
後藤孝明

終始にこやかに、ときにはユーモアを交えながらインタビューに応じてくださった秋山さん。インタビュー中には、メモを取る筆者のペースに合わせて、会話のスピードを落としてくださる場面も。さりげない心配りに、長年愛され続けるお店の秘密が垣間見えた気がしました。

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