メルビィさんで「働く人」
関谷さんのキャリアについて教えていただきたいのですが、ご出身は宮崎ですか？
宮崎出身です。高校を卒業後すぐに大阪の辻調理師専門学校へ進学し料理を学びました。料理の世界に興味があったのと、一度宮崎とは違う街で暮らしてみたかったので、地元から離れた大阪を選びました。
専門学校を卒業後も大阪に残り、ホテルに就職して修行をしました。ホテルでは洋食がメインで、まさに料理のイロハを学ぶ期間でしたね。その後も大阪で和食の店舗やバルで働き、和洋を問わずさまざまな料理を学びました。
宮崎へUターンして居酒屋で店長を務めたのち、鹿児島のラーメン店を経て現在はメルビィで働いています。
料理の世界で長年腕を磨いてきたわけですね。関谷さんが働くうえで大切にされていることはありますか？
ラフな言い方をすると「楽しんで働きたい」「楽しければいいじゃん」と思っています。お客様への接客や料理へのこだわりはプロとしてしっかり取り組むのは当たり前ですが、せっかく働くなら楽しく働いていたい。
これは持論になるのですが、やっぱり仕事なので、どうしてもしんどい場面や大変な場面はあります。ただ、仕事に熱中して楽しんでいる時間はあっという間に過ぎて、むしろ楽に感じるんです。これをダラダラやり過ごそうとすると、時間は長く感じてしまう。
私はもともと「楽」という漢字が好きで、とても奥深い意味があるなと。「楽しい」とも読めますし、「楽」とも読める。さっきの持論で言えば、「楽しいから楽なのであって」、この順番が逆になってしまうと仕事がつらい作業になってしまいます。
それは自分だけでなく、メルビィで働いているスタッフのみんなにも、できるだけ笑顔で働いてもらいたい。スタッフが出勤して、笑顔で働ける環境が作れれば、自然とお客様の満足度も高まると思っています。
確かにスタッフが楽しく働いているお店は、客目線でも居心地の良さを感じます。「楽」の大切さに気付いたきっかけはあったのですか？
節目節目で大切さに気付かされる出来事はあったのですが、特に印象的だったのが大阪のバルで働いていたときのエピソードです。
当時厨房スタッフとして働いていたバルは、お世辞にも雰囲気が良くなく、ギスギスした空気が漂っていました。スタッフ同士もどこかコミュニケーションに乏しく、そういった空気は接客にも表れてしまいます。
前任の店長が退職し私が店長を任されたのですが、初めはキッチンの外から挨拶をしてくれるだけで、距離感が遠いと感じていました。
それがあるときから、わざわざキッチンの中に入ってきて「今日のまかないは？」と聞かれるようになりました。実は店長になってから、自腹でスタッフ用にまかないを作るようにしていました。料理を作るのは好きですし、自分の練習にもなります。料理を食べてスタッフが笑顔になってくれればうれしいな、くらいの気持ちでした。
結果的にその取り組みがよかったのか、そこから段々とスタッフとのコミュニケーションも増え、スタッフ同士に漂っていたギスギスした空気が和んでいきました。自然と笑顔で働く場面が増えていったんです。
それから少し経ったある週末、店の前で10分以上メニューを眺めている1組のカップルがいました。当時大阪のバルは2時間制の店舗が多かったのですが、私が働いていた店は時間制限を設けずゆったり過ごしてもらうのがコンセプトでした。店はすでに満席だったので、店の前で並んでいても、いつ席にご案内できるかわかりません。
「もしかしたら時間制限のある店と勘違いして、席が空くのを待っているのかも」と思い、スタッフに事情を説明してもらうようお願いしました。戻ってきたスタッフに「どうだった？」と問いかけると、「席が空くのを待つそうです」と返ってきました。念のため再度、時間制限がないので、最後まで案内できないかもしれない旨を伝えてもらうと、スタッフから「それでも待つそうです」と言われました。思わず「え、なんで？」と声に出してしまいましたが、そのときは珍しいお客さんもいるんだなという程度で納得していました。
それが次の週末には2組が並び、翌々の週末には3組。さらに次の週には4組、5組とどんどんと増えていきました。スタッフたちといっしょに「嘘やん！」と、驚いたのを今でもはっきり覚えています。
時間制限がないお店にもかかわらず店の前に行列ができたわけですね。何かメニューを変えたりはしたのですか？
まったくしていません。キャンペーンやイベントをしたわけでもなく、ただただ行列ができるのが不思議でたまりませんでした。
そこで自分なりに何が違うのだろうと考えたときに、ハッと気付いたのがお店の雰囲気が変わったことでした。まかないをきっかけに、スタッフ同士のコミュニケーションが増えて、スタッフが笑顔で仕事をする場面が増えた。これは想像ですが、その雰囲気に惹かれてお客様が集まってきたのではないかと。
先ほどの「楽」のお話にもつながりますね。スタッフが笑顔で働ける環境が作れれば、自然とお客様の満足度も高まる。
そうですね。楽しく働く姿をお客様が気に入ってくださり、自然と行列が生まれたような気がします。その実体験があるので、メルビィでもスタッフのみんなに、できるだけ笑顔で明るい雰囲気で働いてもらえるように意識しています。
