四季通り商店街

agili「お客様と一生のお付き合いを目指して」

agili「お客様と一生のお付き合いを目指して」

宮崎市中心市街地商店街の四季通り商店街にお店を構える美容室「agili(アジリ)」さんへ取材にお伺いしました。
Instagramでは個性的なヘアカラーやヘアスタイルが印象的ですが、agiliさんの魅力はそれだけではありません!
美容師というお仕事に対する誠実さと街への想いを agili のオーナーの湯浅さんにお聞きしました。

agiliさんの「歴史」

agiliさんは、オープンから今までどれくらい営業されていますか?

今年で8年目です。(2022年8月現在)

四季通り商店街にお店を出されたのは、どういうところに魅力を感じられたからでしょうか?

もともと、宮崎県内全域の方たちを対象に何かやりたいと思っていました。
住宅街、郊外など他のところも考えたのですが、中心市街地だとアクセスも良いので来店しやすいのではないかなと思ったんですね。
ここだったら宮崎県内全域の方たちが、比較的アクセスしやすいところでもあります。

例えば僕が独立する前は宮崎市大塚町の美容室で働いていたのですが、大塚町だと地図で調べたり、市外の方だと土地勘もないしお店に来にくいと言われることも多かったんです。
宮崎市中心市街地内なら知っている方も多いですし、来やすい場所ですよね。

あとは、自分もこの街中で遊んで育った世代なので、この辺りがもうちょっと盛り上がって、昔、自分が遊んでいた頃のようになるといいなと思ったので、中心市街地で出店することに決めました。

以前の四季通り商店街は、お洋服屋さんが多かったと伺っています

そうです。
僕が学生の頃は、放課後や土日も四季通り商店街辺りに遊びに来て、洋服を買ったり、音楽などもこの辺りで全部覚えていったような場所でした。

最近の商店街に元気がないことは知っていたので、何かきっかけの1つになれればと思っていたんです。

agiliさんはビルの2階にお店を出されていますが、こだわりはあったのでしょうか

いろいろとこの辺りの物件を探している時に、今の当店の場所が、自分たちと同じ世代なら絶対に知っている「TYPE」というお店があった場所だったんです。

TYPEは当時の僕たちが緊張しながら来ていたお店だったので、その場所で美容室を開くことは僕たち世代からしたら、もう「うおー!」って大興奮しますよ(笑)
もう迷うことなく「あ、もうここに決めた」と即決でした。

TYPEというお店は、どんなお洋服を扱われていたんですか?

簡単に言うと、ストリート系の洋服ですね。
自分がそういうカルチャーが好きだったんです。

僕の5つ上ぐらいから4つ下ぐらいまでは多分みんな知っているのではないかと思います。
だから僕たち世代の人に「agiliの場所はどこですか?」って聞かれた時に「TYPEがあったところ」と言えば通じるくらい人気のあったお店でした。

一種のアイコン的な存在だったんですね

今でいう、ニシタチ(西橘通り)のダイヤモンドビル、若草通り商店街の蜂楽饅頭さんでしょうか(笑)

TYPEを青春にしている方は多くいらっしゃるんでしょうね

そうですね。
それこそ湿気が多い日には、通りに面した大きな窓にステッカーを貼っていた跡が残っているのか、あのTYPEのロゴが浮かぶんですよ。
それを見ると「TYPEのロゴが出てきたよ!」って僕たち世代だけテンションが上がるんです(笑)

agiliのオーナー湯浅さん

agiliさんの「お客様との距離感」

「接客」ではなく「接人」をモットーにされていますが、この「接人」ついて教えて下さい

当店はいわゆる型通りの接客はせず、人としてちゃんと接することに重きをおいています。

美容師になろうと思ったきっかけも、元々僕自身も場所見知り、人見知りをするタイプだったからなんです。
どの美容室でもそうですが、「仕事は何をされているんですか?」「どんなものが好きなんですか?」というようないわゆる接客の王道会話がすごく嫌だったんです。
自分みたいな人間もいるだろうから、そういう人が気楽に行ける美容室、そういうサービス業があってもいいと思ったことがきっかけでした。

お客様だって話したくない時やゆっくりしたい時もありますし、逆に話したい人ももちろんいらっしゃいます。
お客様として接することは当然ですが、話しながら作り笑いをしてしまうような、いかにも接客しているような接し方はしないでほしいと、当店のスタッフにはお願いしています。

agiliに来るお客様は、きっとそういう接客は求めていないですから。

僕たち美容師の業界には、「美容師たるもの、お客さんと喋ってなんぼ」みたいな風習というか、そういうものがあるんですよ。
agiliに来られるお客様は皆さんいい方ばかりだから答えてはくれるけど、それに付き合わされると疲れるのではないかと思うんですよね。

お客様にとってagiliにいる時間が、気楽で緊張せずにすむ場所になりたいんです。

仕事の話も、堂々と言える人はいいですが、言えない人も中にはいると思うんですよ。
例えば、夜にお仕事をされている方が、昼間の時間にご来店されたとして「今日はお休みなんですね」と言う人がいますが、その方にとってはその時間がフリーなだけであって、それを美容師が深堀りしてしまうと、お客様が説明なり、辻褄合わせをしなければいけなくなって、それはお客様が辛いじゃないですか。

それ以外でも、何かあった次の日かもしれないし、もう今日は誰とも喋りたくない、そんな日かもしれないので、その辺りはお客様の様子をちゃんと見て察しようね、とスタッフに言っています。

私(インタビュアー)も接客の王道のように話しかけられるのが苦手なので、とても分かります

自分の家族や友達と接する心構えに似ていると思います。
例えば自分の兄弟に「今日なんかあったな」と感じる時に、その人のことを思ってあえて話しかけないであったり、話しかけられたらちゃんと聞く、といった対応をすると思うんです。

しかし美容師の業界の今までの悪しき風習ではないのですが、美容師側が一方的に話しかけて満足するのは違うと思うんですよね。

シーンと静かな状況でも、それを気まずい感じの静かさにしないことも大事です。
ちょっとした声かけも当然ですが、(シャンプーを)流しますねの一言にしても、それを不愛想に言ってしまうと単純に気まずいお店になってしまうので、僕たちはちゃんとあなたのことを見ていますよ、ということは伝わるようにスタッフ全員で心がけています。

相手が望まない声掛けはしないということですね

そうですね。
必要以上に話しかける必要はないと思いますし、お客様もその時間を自分のために使っていただけますからね。

でも、すごく難しいことですよね。静かになったあとに声をかけるタイミングなどをひとりだけではなく、対応するすべてのお客様に対して気配りをする必要がありますよね

たしかに、逆にこちらが話しかけなければいけない場面ももちろんあると思いますが、そこもお客様の様子をちゃんと見て接するようにしています。

接客より難しいとは思うのですが、それができた時、お店としてもサービスとしても面白いのかなと思うんです。
他との差別化ではないですが、その人にとって「agiliの代わりってないよね」「美容室に行くならagili一択」となっていただけるのが理想です。
ですのでありきたりな美容室の接客をしないように、スタッフと一緒に頑張っています。

agiliのオーナー湯浅さん

そこまで人として接することに徹底されているのはなぜでしょうか?

美容師という仕事は、お客様の人生と長くお付き合いできるんですよね。

小さい頃から入学、卒業などの節目を経て、その方が就職したり、結婚したり、子供が生まれたり、そういうところまでずっと付き合っていけるということが、僕はすごく面白いなと思っています。
友達とまではいかないけれど、他人でもない関係性でいられることがこの仕事の面白さ、醍醐味なんですよ。

どうしても練習や勉強が必要な業種ではありますが、そこにやり甲斐があるんですよね。

他のサービスでは難しくても、美容師さんでしたらそれが可能ですね!

そうですね、それがすごく面白いんです。
ですので、流行りのモノもすごく追うのですが、一番ベーシックな、いわゆるクラシックなスタイルも徹底して練習させています。

技術的なところですね?

そうです。
おじいちゃんおばあちゃんから赤ちゃんまで、全部対応できます、どのジャンルも対応できます、というのがagiliの売りです。

近所のおばちゃんがかけるようなパーマ、サラリーマンの人の刈り上げといった髪型も対応しますし、トレンドを取り入れたスタイルも対応します。

世間にとっても皆さん自身にとっても、その年その年の「旬」がありますよね。
お客様と一生付き合っていきたいので、その方がイケイケの時はイケイケなスタイルのオーダーに応えて、結婚して、お母さんになった時はちゃんとそれに対応したスタイルのオーダーにも対応したいんです。
極端な話をすると、おばあちゃんになった時にもその中で絶対おしゃれなスタイルをagiliは全部提供できます。

そんな思いもあって、街中でだったら実現できると思ったのでお店を作るに至ったわけです。

agiliのオーナー湯浅さん

SNSを拝見させていただきますと、とても個性的なヘアカラーやスタイルをオーダーされる方が多いですよね。実際にそのオーダーを形にするまでにコミュニケーションが必要と思うのですが、そこに対するこだわりなどがあれば教えて下さい

僕自身が場所見知り、人見知りをするので、お客様は僕たちに伝えたいことを言葉にできない、という前提でお話を聞くようにしています。

例えば「グレーにしたい」というオーダーでも、そのグレーは僕たちが想像するグレーとは絶対に違うんですよ。
お客様が想像しているグレーは具体的には何色なのかという細かい部分をじっくり聞きます。

よく聞く言葉でアッシュカラーというものがあります。
アッシュカラーという言葉だけが1人歩きしている中で、人によってその色の認識が違うことが多いんです。
実際は色よりも、アッシュカラーにしたい理由であったり、その本質はどうしたいのかという部分のほうが大事なときもあるんですよね。

ふわっとしか言葉にできないオーダーであれば、そのふわっとを言っていただけるだけで僕たちが理解できるような環境にしたいんですよ。

例えば、グレーっぽいピンク、みたいな感じですか?

そうですね。
「シュッとしてて」や「ふわっとしてて」、「可愛い感じで」、「柔らかい印象で」など、自分の言葉でいいのでおっしゃってくださいとお伝えしています。

今の時代はSNSなどもあるので、お客様から伺ったイメージに近いものを探し「ということは、こういうことですよね?」と僕たちのイメージを具体的に共有しやすくもなっているので便利ですね。
他にも「この髪型のここの部分好きでしょ?」とか、ヘアカタログをお見せした時も「するしない置いといて、これ嫌いじゃないでしょ?」「これ嫌いでしょ?」といろいろなものを見せていき、お客様のイメージの系統がどういうものなのか、より具体的に形にしていくんです。
ですので僕たち側も、専門用語を使わないように気を付けています。

美容室の定型のカウンセリングではなく、お客様に合わせて少しずつカウンセリングの手法を変えているのですか?

そうですね、本当にやり方は十人十色です。

専門的な説明を欲してる方でしたら専門的なカウンセリングもしますし、一方でこのお客様は何かを必死に伝えようとしているな、と感じる時は、1つずつじっくり聞き出すようにしています。

先程お話したように、家族や友人との接し方ですよね。
自分の友達だったら、自分の親だったら、彼氏彼女だったら、という心構えでお客様と接することを大事にしています。
自分の子供だったら、必死にその子の求めているものが何なのか理解しようとするじゃないですか。
子供相手に大人の難しい言葉を使ったりしないですよね。

当店のスタッフは見た目も派手で、誤解されやすい場合があるので「だからこそそういうところをちゃんとしてね」といつも伝えています。
僕たちのような派手な見た目をした美容師が手を抜いて、普通の見た目の美容師さんと同じ対応をした場合に、僕たちが思っている以上にお客様に精神的な負担を与えてしまうこともあります。しかしこれは、逆に同じことをした場合は2倍くらい良い印象を持っていただけるということでもあると思っています。

僕自身が場所見知り、人見知りをするので、同じ人たちにとって居心地がいい場所と人をという部分は特に気をつけています。

今、お話をしている感じもそうかもしれないですね。美容師さんと対面して話す場面はあまりないですし

そうですね(笑)
ですので、鏡越しだと人と目合わせやすいけど、面と向かうと少し緊張するんですよね。
髪の毛を触るというのはついでのような感じで、僕にとって人と接するためのコミュニケーションのツールの1つが美容師というだけでもあります。

人見知りだけど、人と接することはお好きなんですね

好きですよ。
ただ武器が何もない状態で、1対1でお話しましょう、となるのは辛いんです。
え?何喋ればいいんだろう?と考えてしまうのですが、髪の毛を触りながらでしたら、特別何かを話さなくても間が持つんですよね。
話すにしても髪の毛に関する話題が多いので、話していくうちにそこからだんだん広がっていくこともあります。
結局、そのご家族皆さんでいらっしゃっていただいて、いつの間にか人と仲良くなっていくんですよね。

いいお仕事ですよね

やればやるほど、そう思います。

agiliのオーナー湯浅さん

         
                

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